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18SamplePreparationProducts固相抽出の上手な使い方2.固相抽出法2.8.固相抽出操作を行う上での注意点実際の試料に対して固相抽出操作を行う際には、試料の取り扱いや固相抽出操作そのものにおいて、いくつか注意が必要です。以下に代表的な注意点についてまとめました。2.8.1.pH依存性水溶性試料中の目的物質を、SDB、C18などの無極性相に効率的に保持させるためには、目的物質を解離型から非解離型にする必要があります。一般的に、酸性化合物は酸性にすることにより解離が抑えられます。たとえば、ある目的物質の解離定数をpKa=4.5とすると、そのpKaより2.0以下のpH、すなわちpH2.5以下にすることで非解離型となり、目的物質を効率的に保持できます。塩基性化合物では、pKaより2.0単位以上高いpHに調整します。仮に、pKa=7.5の塩基性化合物を保持させるためには、pH9.5以上に調整して非解離型にすることで無極性固相に保持されます。また、イオン性化合物をイオン交換相に適用する際は、無極性相以上にpH依存性を考慮する必要があります。イオン交換相互作用を活用するときのpH依存性のポイントについて、弱陽イオン交換のCBA固相(図10)と強陽イオン交換のSCX固相(図11)を用いたときの例を示します。 図10 陽イオン交換固相における相互作用その1(弱イオン交換基)1.0非解離型(COOH)50%解離COOHCOO―pH6.8以上で100%解離(COO−)保持2.84.86.8pH7.0pH8.014CH3CH3CH3・H3C-SO4−CH3CH3neostigminemethylsulfateN+NOOCBA(カルボキシル基導入型)の例CBAの解離定数pKa=4.8pH4.8で固相自体50%解離しているので、それより2.0高いpH6.8以上にすれば解離が促進されます。(目的物質も解離している場合)逆にpH2.8以下にすれば、CBAが非解離型となり溶出が起こります。【分析対象物質】メチル硫酸ネオスチグミンは、強イオン性でどのpHでも解離していますが、CBAの解離pHと使用pHの上限の関係から、6.6∼8.0が保持の適正範囲です。図12解離定数(pKa)イオン交換系固相の選択上の注意点目的物質InertSeppKa*作用官能基対象化合物弱イオン強イオン酸性物質陰イオン交換MA-1、MAX4級アミン−−CH2−N+(R)3〇×MA-2、WAX3級アミン11.0−CH2−N(R)2〇×NH2アミノプロピル9.8−CH2CH2CH2NH2×〇PSA1級、2級アミン10.1,10.9−CH2CH2CH2NHCH2CH2NH2×〇SAX、SAX-2トリメチルアミノプロピル−−CH2CH2CH2N+(CH3)3〇×塩基性物質陽イオン交換MC-1、MCXスルホン酸1.0−CH2−SO3−〇×MC-2、WCXカルボン酸4.5−CH2−COO−〇×CBAエチルカルボン酸4.8−CH2CH2−COO−×〇PRSプロピルスルホン酸1.0−CH2CH2CH2SO3−〇×SCX、SCX-2ベンゼンスルホン酸1.0−CH2CH2C6H4SO3−〇×*:pKaは官能基の参考値になります。図11陽イオン交換固相における相互作用その2(強イオン交換基)1.0pH7.29.2pH14pH7.2以下の目的物質が100%解離SCXの解離が促進され100%解離目的物質が50%解離CO2HCO2HCH3CH3・HClNNSCX(ベンゼンスルホン酸基導入型)の例SCXの解離定数pKa=(<1.0)強陽イオン交換のSCXは、(図11)におけるpH1.0の強酸性領域からpH14のアルカリ領域まで常に解離しています。目的物質はpH7.2以下で100%解離しているため、SCXに保持されます。溶出は、pH11.2以上で目的物質の解離を抑えて行う必要があります。その場合は、アンモニア水(アンモニア塩)が混在したメタノールを用いることにより、アンモニウムイオンを用いて競合させながら溶出します。【分析対象物質=pKa9.2】SCXの解離pHが1.0以上であり、-マレイン酸クロルフェニラミンのpKaから7.2以下、すなわち1.0∼7.2の範囲であれば、イオン交換相互作用が起こり保持されます。chlorpheniraminemaleate固相抽出の上手な使い方
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19SamplePreparationProducts固相抽出の上手な使い方2.固相抽出法2.8.2.対イオン/相対的吸着特性イオン交換相を用いるときに基準となるのが、次の(図13)に示す対イオン/相対的吸着特性の配列表です。イオン性の目的物質を保持するときの絶対条件は、目的物質がマトリックス中で帯電していることですが、選択した固相が目的物質より相対的吸着特性が高ければ、イオン交換相互作用は起きません。その場合は、溶出の際に保持されている目的物質を非解離型にするか、より相対的吸着特性の高い対イオンを用いれば、溶出してきます(固相充填剤の対イオンはメーカーによって異なる場合がありますので、製品カタログなどで確認が必要です)。2.8.3.マトリックス中の極性溶媒の影響無極性固相を用いて目的物質を保持させるときは、試料マトリックス中にメタノール、アセトニトリル、またはアセトンなどの極性溶媒がどの程度混入しているかを十分に考慮する必要があります。有機溶媒濃度が一定量存在すると、無極性固相を用いた逆相分配モードは著しく保持が阻害されるようになります。その濃度は、目的物質の疎水性に依存します。疎水性がきわめて強ければ、溶媒濃度が20%程度含まれていても保持されますが、30%、40%と濃度が高くなるにつれて、カラムを素通りする(破過、またはブレークスルーと呼ぶ)現象を引き起こすため注意が必要です。イオン交換相を用いる場合は、目的物質が解離していればイオン交換相互作用は起きるので、極性溶媒が70%程度混在していても影響せず保持させることができます。シリカゲル(SI)、フロリジル(FL)およびアルミナ(AL)などの極性固相を用いるときは、目的物質を-ヘキサンなどの非極性溶媒に溶かした後に負荷します。目的物質によっては-ヘキサンに溶解しないものもありますが、このような場合、目的物質が溶ける溶媒、たとえば混和するジクロロメタンやアセトンなどを用いて一度溶解した後、-ヘキサンで溶けた目的物質が析出しない程度まで希釈して、極性をできるだけ抑えながら固相へ負荷するとよいとされています。目的物質が陽イオンの場合対イオンLi+H+Na+NH4+Mn2+K+Mg2+Fe2+CsZn2+Co2+Cu2+Cd2+Ni2+Ca2+Sr2+Cu+Hg2+Pb2+Ag+Ba2+目的物質が陰イオンの場合対イオンOH−F−プロビオン酸酢酸ギ酸HPO4−IO3−HCO3−Cl−NO2−BrO3−HSO3−CN−Br−NO3−ClO3−HSO4−I−クエン酸ベンゼンスルホン酸相対的吸着特性小大相対的吸着特性小大図13対イオンの相対的吸着特性固相抽出の上手な使い方
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